わがふるさと 大井川

澤谷 芳広 , 淺沼組

 前回本コラムに執筆したのは東日本大震災の直後でしたので、ちょうど8年ぶりの執筆となります。この8年間、復興は勿論のこと世の中は進歩を続けていますが、私の故郷は大きな進展もなく、以前の状態を維持しているように感じます。

塩郷の吊り橋
塩郷の吊り橋
蓬莱橋
蓬莱橋

 私は静岡県の大井川沿いの片田舎に生まれ、その後数回引っ越していますが、引っ越し先はいずれも大井川沿いの町(部落)で、故郷を離れるまではずっと大井川の近くで生活してきました。

 特に3歳から小学校2年生まで生活していた家は、大井川まで10メートルくらいしか離れていませんでした。台風で目の前の堤防が決壊し家まで流されそうになったこと、近くに架かっている吊り橋(塩郷の吊り橋)を渡っていたこと、目の前の川で泳いでいたことは50年以上が経過した今でもよく覚えています。墓参り先がその場所からさらに大井川上流にあることから毎年そこを通るのですが、残念ながら当時の住まいはかなり前に取り壊されています。大井川の水の流れは変わったものの、その廻りの風景は全く以前のままで、そこを通る度に昔を想い出させてくれます。

 大学に入る前までは現在も実家のある島田市に住んでいましたが、そこには蓬莱橋という木造の橋 (1997年世界一長い木造歩道橋としてギネス認定)が大井川に架かっており、橋からは富士山を見ることもできます。蓬莱橋は何度か洪水で流されそうになったことがありましたが、どうにか以前の形を維持し続けています。実家に帰った際には、今でも大井川まで散歩に行き、蓬莱橋を眺めたりします。

 大井川は世間的に名所と呼ばれるほどのところではありませんが、私にとっては心が休まる場所であり名所のひとつです。

2019年3月