北の大地

宮澤憲一,奥村組

 今年度からCTP協会の委員として参加させていただく事になりました、奥村組の宮澤と申します。技術部会でお世話になります。何卒よろしくお願いします。
 今回、自己紹介も兼ねてマンスリーコラムを書かせていただく事になりました。過去のコラムを見させていただきまして、皆様のようなご紹介のできる趣きのあるエピソードも特にない・・・ので、最近、ふと思った事についてつらつらと書いてみたいと思います。
 私は、奥村組に入社して今年で14年目となります。入社後2年間は現場員として、その後3年目からは設計部構造担当として物づくりの良い所、辛い所を経験してきました。基準法が大きく変わるような大事件が起きたりした中、皆様と同様に私も構造設計者としてあくせくと働いてきました。
 最近ふと、北海道の物件の担当になりました。10年もの間、設計に携わってきたのですが、そのほとんどが関東近辺で、このように遠い場所の建物を設計監理する事はありませんでした。そこで感じた事として、幼稚な表現で申し訳ないのですが、北海道は大きいです。平らで広いです。東京の物件ばかり担当してきた私の感覚が全く当てはまりません。最寄りの無人駅から目的地までが歩いて30分もかかります。多くの方は「歩いて30分かかる現場くらい良くある事・・」と思われるかもしれませんが、驚いた点は、現場までの30分の道すがら、平坦で真っ直ぐで先が見えない並木道をひたすら直線に歩くということです。目を閉じて歩いても大丈夫なくらい真っ直ぐです。景色もさほど変わらない、起伏のない直線の道をただただ歩く・・・今まで経験をした事がありませんでした。
 歩き始めて数分間は色々と考え事をしているのですが、単調に歩き続けている内に細々と考える事もなくなって廻りの景色や鳥の声だけが頭に入ってくるようになり、それも超えると非常に穏やかな気分になります。まさに解脱です。時間や締切りに追われてアタフタと仕事を行っている普段とは全く異なった自分に生まれ変わります。現場での対応にも心なしか余裕が生じ、歩き方1つとってもゆっくりゆったり。北の大地は、人の心も大らかにしてくれるようです。
 ・・・ちなみに、羽田空港に帰ってきたとたん、駅間をセカセカと早歩きで進む自分がいます。元に戻るのはあっという間です。

monthly201208.jpg

2012年8月