サグラダファミリア

邊見一考,東急建設

建設中の聖家族教会
建設中の聖家族教会
生誕のファサード
生誕のファサード
受難のファサード
受難のファサード
にぎわう聖堂
にぎわう聖堂
天井とステンドグラス
天井とステンドグラス

普及促進WGでお世話になっております。東急建設株式会社の邊見です。みなさんの記事を読ませていただきました。プライベートな話がほとんどで、WGや忘年会でお話しさせていただいた印象とはまた違った一面に触れることができ、とても面白かったです。私も皆さんに倣い、プライベートな話をさせていただこうと思います。

6月初旬になりますが、スペインに新婚旅行に行ってまいりました。もともと海外旅行などあまり興味がない私でしたが、ガウディのサグラダファミリアだけは見たいと思っていました。幸い妻の希望もスペインで一致していたもので、サグラダファミリアを見ることができました。

サグラダファミリアは、スペインバルセロナにある現在建設中の教会です。工事は1882年から始まり、翌年、わずか31歳にしてガウディが建築監督になりました。彼は以後亡くなるまでの43年間、ほとんどの時をこの教会で過ごし、生活のすべてを捧げたそうです。着工当時は石積みが中心でしたが、今は鉄筋コンクリートが主体となっているそうです。
完成は100年先とも思われてきましたが、技術の進歩と見学者による寄付(見学料)で驚くほどの速さで進み、ガウディ没後100年の2026年の完成を目指しているそうです。

細かい観光案内は割愛させていただきますが、印象に残るポイントは3つあります。
主任彫刻家を務める外尾悦郎氏が手掛けた彫刻も飾られている『生誕のファサード』はとても繊細で、ある種の恐怖を感じるような迫力を秘めたものでした。キリストの受刑、死、復活がテーマとなった『受難のファサード』は、生誕のファサードとは対照的に、大胆で力強い印象を受けました。そして、ローマ法王が出席する献堂式が行われたばかりの『聖堂』内部は、とても神秘的な場所でした。天井を見上げると木漏れ日のようなデザインで、まるで森にいるような気分になり、そこにステンドグラスからこぼれる光がより一層神秘的な印象を与えています。

この建物がすごいところは、ガウディが生涯をかけたそのエネルギーが宿っているところと、詳細な設計図が残っていないにも関わらず、その遺志は受け継がれガウディの代名詞ともなっているところだと思います。設計や工事のスタッフなどたくさんの人々により、ガウディが何を形にしたかったのかが研究され、それが具現化される。ガウディはもうこの世にはいませんが、その想いはいまだ生き続け、サグラダファミリアという形となって存在し続ける。まさに建築家としての生き甲斐がそこにはあるのだと感じました。

私が建築を志したきっかけは、自分の生きてきた証をどこかに残したいという想いでした。
建築物という存在感の大きなものを自分の軌跡として残せるということに仕事の魅力を感じ、建設業という世界に飛び込んできました。サグラダファミリアを見て、10年前の就職活動を始めたころから今までの想いが呼び起された気がします。
毎日忙しいなかで、字の通り心を失いそうになりますが、自分の建築に対する想いを再認識し、これからも頑張っていこうという源になる素敵な経験になりました。

完成は15年後。48歳になった自分はどのようになっているのだろう。50歳を目前に控え、自分の歴史を振り返りながら、もう一度サグラダファミリアを見に行こうと思います。

2011年7月