海外滞在の記録~ホーチミンでのある1日~

青木 誠,戸田建設

 戸田建設の青木と申します。
 本工法の開発初期の段階から関わらせていただいておりますが、採用事例の少なさと、なによりも本協会技術部会への出席率の悪さ故、皆様にはご迷惑の掛け通しで、いつも申し訳ない気持ちで一杯です。
 気長に、末永くお付き合い頂戴できればと、切にお願い申し上げます。
 さて、今月のマンスリーコラムは、私が何やカヤと一昨年の1年間を通い詰め、通算で半年以上を現地生活したベトナムはホーチミンのある一日を現場への出勤を通じてご紹介しようと思います。
 文章表現力の乏しさと、貧弱な語彙ゆえ、写真主体に逃げておりますが、悪しからずご了承下さい。

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おはようございます!~早朝の市内~

 平日の朝6時頃、起き抜けにホテルの一室から見下ろした光景です。昼間の喧騒がウソのように静まり返っており、バイク(後出)もほとんど見られませんが、公園という公園では、多くの老若男女がひたすら歩く歩く!そのほかにも、バドミントンや太極拳、よくわからない体操(ラジオ体操みたいなヤツ)など、ひたすら運動しています。やはり、やはり気温の低い朝が狙い目でしょうか、昼間は熱中症も心配ですし・・・。ベトナムの朝は意外と早く、1日の中で、最も平和的な時間と言ってよいと思います。
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行ってきます!~車窓の光景:バイク!その1~

 朝食を終えると、クルマで現場に向かいます。初めてベトナムを訪れた方々が等しく驚くのがバイクの数と運転マナーでしょう。一説では、総人口8600万人に対して2300万台以上のバイクが走っているとのこと。年少者・老人を除けば、一人1台?とにかくそこら中から湧いて出てきます。このバイク、ただの移動手段だけではなく、貴重な輸送手段でもあります。ベッドのマットレスから大きなサッシ枠やガラス、長い笠木など、何でもバイクで運んでしまいます。夜になれば、どこに行くのか、遅くまで若者たちはバイクで走り回っていますが、「涼むため」との説は、真実味を感じずにいられません。
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車窓の光景2~バイク!その2~

 さて、そのバイクですが、3人乗りなどはザラで、中には5人(!)などというのも意外と日常的な光景だったりします。一般的な5人乗りの内訳ですが、前から、①上の子供(立席)、②お父さん(前席に着席、運転)、③真ん中の子供(両親に挟まれた状態)、④お母さん(後席に着席)、⑤末の子供(お母さんの背中)基本的には2人乗りまでが許される範囲のようですが、写真のような大人2人+幼児1人の場合は特にお咎めはないそうです。また、法改正以前の写真のため、ノーヘルですが、今は罰金モノ(最高20万ドン≒1000円、安!)です。
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車窓の光景3~渋滞~

 ご他聞に漏れず、街の中心部では朝に夕に渋滞な訳ですが、クルマに先ほどのバイク軍団が加わり、コトがややこしくなっています。基本的に車線を守ることにこだわりがない皆様ですので、3車線の道路に5台の車が並び、その間をバイクが埋め尽くす、これが標準的な交差点風景になります。バイク達は、たとえ赤信号であっても「行ける!」と思えば果敢に突入しますので、交差点はクラクションの嵐!また、フランス統治時代の名残なのか、幹線道路の交差点にはロータリーが多く見られます。この形式は、広い心と譲り合いの精神があって初めて成立するようで、その手の心にいささか縁の薄いベトナムの民だと、ほとんど無法地帯です。特にバイクは歩道は走るわ、勝手に逆送するわ、やりたい放題。
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車窓の光景4~建設現場~

 少し改まって建設現場風景など。市内の中規模の建物の典型的な現場風景です。足場は無く、仮囲いもあるような無いような、一応養生生ネットがありますが、直下を一般の人が歩きます。上下作業は当たり前、安全管理って何?といった状態で工事は進みます。作業員は安全帯などを使うこともなく、各自の勝手な判断で、その方が便利だと思えば、クレーンの足をよじ登ったりします。(それでも、罰則も無く、不思議と墜落事故は無いそうです)非常に華奢な柱+梁のRC造純ラーメン構造が基本で、壁は全て煉瓦積み+モルタル仕上げとなります。この現場は8階建てですが、超高層であっても外壁は煉瓦積みであることに変わりはありません。日本では考えられませんが、地震が無ければこれもアリかなと思えます。
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途中の街、BIEN HOA

 現場に向かう途中に通る町(市)です。ホーチミンを出てからは国道1号線を北に向かっていましたが、ここで東の方へ分岐し、51号線に入ります。ここは、ベトナム戦争当時、アメリカ軍の巨大な補給基地があったところだそうです。ホーチミンに限らず沿道の建物には西洋風の建物も多く、何となくいい感じです。先ほどの現場は角地の建物ですので、形が少し違いますが、一般には狭い間口と広い奥行きの建物が多く、その形状のまま10階建てがあったりします。(塔状比の高さたるや・・・!地震が無いってヤッパリいいことですねぇ)
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車窓の光景6~牧場~

 現場のあるロンタン工業団地の手前に牧場があり、ハリボテのウシが姿を見せます。牛乳、ヨーグルト、アイスクリームなど、乳製品がとても旨い!そもそも工業団地となる前は牧場であったとのことで、造成直後でまだ樹木の伐採も途中段階の時点で訪れた際には、至る所に牛の落とし物が散乱しておりました。ここは、ホーチミン周辺では比較的有名な観光地・海水浴場のあるブンタオへ向かう国道沿いですので、ドライブインのような施設もあり、休日は結構なにぎわいとなります。
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ドライブも終わり~工業団地に到着!~

 ウシのハリボテの先を右折し、ロンタン工業団地を目指します。国道から分かれ、工業団地に向かう道路は、交通量も少なく道幅もゆったり片側2車線の直線路中心になります。混んでいる国道との差は大きく、ついついスピードも上がりがちに・・・。道路には帯状の突起があり、スピードを抑えようとの明快な意思表示がありますが、それはそれ、あらヨッと越えていきます。後席に着席していると、間違いなく体が宙に浮きますし、時として頭が天井にぶつかったりします。
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終点!~現場到着です~

 ホテルを出発して約1時間、40kmほど離れた現場に到着です。お疲れ様でした!この1時間、疲れた体には貴重な休息時間で、車内は基本的には静寂な空間です。ここは、ホーチミン近郊でも新しい工業団地らしく、結構更地が残っていました。ベトナム政府は熱心に企業誘致を行っているようですが、当時、日系企業はこの現場だけで、それは今でも変わっていないようです。現場に仮囲いはなく、外構フェンスを本体よりも先に施工して内外の区画とします。

建物のご紹介とちょっと感想など
 最後に少しだけ、この建築計画をご紹介します。お客様にお断りしていないので、詳しい説明は避けようと思います。下の写真も少し手を加えていますが、ご了承下さい。建物は鉄骨造で、EXP.Jを挟みながら長辺266m×短辺70m、地上2階ないし3階の工場です。外壁は断熱金属パネルで、ベトナムにある一般的な工場(外壁折板貼り)とは一線を画し、たいへんきれいな外観をしています。(自画自賛、失礼しました)ベトナムでこの規模の建物を施工するのは、当社としては初めてのことで、設計も施工も関係者一同、とても苦労しました。どこでも海外は同じでしょうが、日本とは風俗、習慣、設計規準や計算方法、労働や安全に対する考え方など、あらゆるものが違っており、郷に入れば郷に従え、日本の常識を捨てないとうまく運びません。日本では、法や基規準類のハザマで金縛り状態で設計を行っていますが、逆に難しい判断はそれほど必要が無いように思います。一方、こうした国では法や基規準類は未整備で、結局担当者の判断が全てになります。日々、ハプニングの連続の中で、判断し、指示する難しさと怖さ、そしてチョッピリ楽しさを味わった一件でした。

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2010年8月