一期一会 ~キャプテンパイル工法の誕生~

許斐 光生,高周波熱錬,キャプテンパイル協会事務局長

 協会の皆様には協会設立以来大変お世話になっております。協会の事務局をさせて頂いています、高周波熱錬(株)(ネツレン)の許斐です。キャプテンパイル協会は2006年4月に発足しましたが、キャプテンパイル工法誕生の話をさせて頂きます。

 2004年1月、年始の挨拶回りに協会初代会長の鹿島建設設計部の吉松さんのところへ伺ったのが事の始まりでした。私はかねがね場所打ち杭用のウルボンを広めたいと思っており、一方吉松さんは場所打ち杭用の杭頭半固定工法を開発したいと思っていました。年始の挨拶は通常ノウアポイントで伺いますが、この時はたまたま日頃外出がちな吉松さんが在席していました。二人で雑談をしているうちに、杭の話となり杭頭半固定工法と杭用のウルボンを組み合わせるとお互いの長所を発揮できる工法を開発できるとの認識で意気投合しました。

 しかし、問題がありました。鹿島さんには開発にかかる数千万円の資金捻出が難しい。一方、ネツレンには工法を開発する知恵がない。そこで、鹿島さんには工法開発の知恵を絞っていただき、資金は各ゼネコンさんとの共同開発で調達することにしました。その時から、鹿島の吉松さん宮田さんはいろいろな工法アイデアを出し、私は共同開発に賛同していただける会社を探して毎日会社訪問です。

 1月から始めた会社訪問は3月までかかり、お陰様で8社の会社に賛同していただきました。現在の協会正会員会社10社です。2004年4月27日に初会合を開き、今の工法の形状を初めてオープンにしました。工法の名称を「キャプテンパイル工法」とし、いよいよ開発がスタートしました。

 私は以前鉄鋼メーカーで鉄骨用の鋼材や鋼管杭を扱っていました。一方、吉松さんは鹿島建設で高層RC住宅の構造設計部門で活躍されていました。当時の私からすると鉄骨用鋼材を販売する上でRC造の高層住宅の台頭は目障りでした。ところが11年前にネツレンへ来ると攻守逆転し、今度はRC造のウルボンを販売しなくてはならなくなり、S造やSRC造の建物が目障りとなりました。杭においても然りで、鋼管杭一色だったのが今では鋼管巻無RC場所打ち杭一色です。そうなると昔の吉松さんは“昨日の敵は今日の友”のことわざ通り私にとって大変な味方となりました。人の心理なんていい加減なものです。

 この度のキャプテンパイル工法の開発も今更ながら会社が変わったお陰で吉松さんと出会い、年始の挨拶でたまたま会えたことがキャプテンパイルと巡り会えたものだと思っています。工法開発が終わり、研究会が協会組織となり今や23社の大世帯となりましたが、社外のいろいろな方々と巡り会う機会に恵まれ感謝しております。昨年還暦を迎え今後、人との巡り会う機会が少なくなっていく折、人と人との出会いを益々大切にして行きたいと思っております。

2010年6月